早戸大滝、丹沢山

2018.5.2

単独

 

本間橋7:13

雷平8:03

雷平8:15

雷滝8:37

平戸大滝10:55

平戸大滝11:10

丹沢山13:36

丹沢山14:17

本間ノ頭15:20

本間ノ頭15:30

本間橋16:40

 

 最近、ハイキングをしても面白くないと感じていた。山と高原地図上の実線ルートしか歩いていないからだろう。もう、山歩きの趣味を始めてから延べ15年が経つ。そろそろ道の無い所へ行きたい。そう考えて思い立った。

 5/2は、夕方から雨予報だった。また、自宅を早出して公共交通機関を利用すると下山が日入を過ぎる。この山行は早出が鍵と考えて、現地泊&早朝レンタカーの2段構えとした。

 本厚木のカプセルホテルに23時頃チェックイン。風呂を浴びてさっぱりした。明朝5時にレンタカーを予約しているのでさっさと寝よう。4:30に目覚ましをセットして眠りについた。

 目を覚まして、据え付けの時計を見ると5時を過ぎている。目覚まし機能をONにし忘れたようだ。さっさと身支度をして、チェックアウトしてレンタカー屋へ向かう。運転を始めると、熟睡は出来なかったがまあまあ寝れたようで、頭がすっきりしているのがわかった。途中、近くのコンビニで朝飯を買い、車中で食べた。宮ヶ瀬湖方面へ向かう運転は新緑の中、気持ちが良かった。あまりにも気持ちが良いので、登山届を提出する宮の平を一気に通り過ぎてしまった。気が付いた時にはすでに本間橋へ向かう林道に入り込んでいた。戻って提出し直そうかと思ったが面倒臭いのでやめた。

 本間橋に到着したものの手頃な駐車スペースがないので、魚止橋まで走らせた。橋の手前に3台停まっていた。思ったより多い。私も橋の手前に停めた。準備をしていると1台軽自動車が私の車の後ろに止まった。中から青年が出てきて、挨拶を交わす。ナンバープレートを見ると函館ナンバーである。随分と気合が入っている。

 伝通から登山道が始まった。数分行くと小さな沢筋が現れた。沢筋にも踏み跡があり、そちらに行きたくなったが地図では沢筋に道はない。沢を越えて尾根を越えて登っていく。途中、作業小屋を通り過ぎて、早戸川を見下ろす場所に来た。木橋が渡してあるのが見える。木道を渡り、左岸の赤テープを拾いながら歩いた。道は良く踏まれていて迷いようがない。あまり難しいところはなさそうだし、沢シューズがあれば沢の水に濡れながら歩いていいと思った。たまに道を外れて登山靴のまま水流に入って、歩いてみた。

 雷平へは1時間足らずで到着した。渓流釣り師が3名おり、挨拶。3名は大滝方面へ。私は休憩後、雷滝方面へ。踏跡が薄くなるが、赤テープもあるので迷うことはない。20分ほど歩くと、目的の雷滝に到着した。そこそこの瀑布。夏なら滝壺で泳ぎたいと思った。近くの大岩に登り上げて滝と流れを撮影した。

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 雷平へ引き返す途中、函館の青年と渓流釣り師の方1名とすれ違った。行きと違って水流で遊ぶことなく赤テープをどんどんと下っていった。しばらくしてやけに踏み跡が明瞭で赤テープが充実していることに気づき、何か変だと思って、コンパスと地図で水流の方向を確かめた。どうやら雷平を通り過ぎて伝通に向かう道を進んでしまっていたようだ。本滝へ進むには雷滝から雷平にまっすぐ下りて、雷平で右折する。右から入り込む沢に気づかず爆進していた。しかも伝通へ向かうには、右から入り込む沢を渡るために木橋を渡らないといけない。そこで気づこうものなのだが。おバカさんだった。

 雷平へ戻り、休憩。ルートミスで20分くらいロスしていた。行動食を食べていると、渓流釣り師の方が大滝方面へ曲がっていった。

 雷平を出発してしばらくすると、沢筋が広くなったところで先ほどの渓流釣り師3名が昼飯を食べていた。その前を渡渉して対岸に渡り、さらに上流へ向かう。このまま歩けば大滝へと向かう沢との出合があるはずだ。そう思い黙々と歩く。しかし、どれだけ歩いても出合にたどり着かない。左から流れてくる沢に出会わない。コンパスと地図で確かめると進んでいる方角と出合に向かう水線の方角に若干の誤差があるが、これだけでは現在地特定の決め手にならない。それではと、周囲の地形を見渡す。沢下流の方角にポコが見えた。地形図でいう1056mポイントだろう。そのピークは目線より若干高い位置にある。出合に向かう沢にいれば、このポコは見上げるような格好となりピークなど見えようはずはない。また、出合前なら進行方向にこちら側へ張りだす尾根が衝立のように聳えているはずだが、今私がいる場所より上流はV字谷が続くばかりだ。

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 どうやら出合を通過し本谷沢を遡行しているようだった。2度目のルートミス... どんな地形が現れるかを事前によくシミュレーションしているべきだった。これは大いに反省すべきこと。悲しい気分だったが、自分で現在地を特定したという満足感もあり、復帰への足取りは重くはなかった。

 果たして、目的の出合は想像していたような大きなものではなく、ちょっと脇から流れてくる沢が合流しているポイントといったようなものだった。そこから100mも奥に進めばすぐに大滝だ。そういえば、この沢の流れは本谷沢を登っている時にちょっと見えたような気がする。その時は、それを大滝への沢だとは思はず、これまでの道中で出てきたようなただの支流かと思っていた。

 奥へ3段ほど小さな滝を登ったところに大滝の滝壺がある。隠された大滝といった趣だ。膝まで水に浸かりながら、滝の脇の岩壁を攀じ登ったり水流に逆らい登っていく。手前の最後の1段は右壁から登ることが可能、とネットから情報を得ていたが、それは沢登りに慣れている人ならば、という条件付きだった。1度も沢登りをやったことはなかったので、大事をとってザックはその場において、空身で登ることにした。ホールドをひとつひとつ確認しながら、撤退できるかどうかをイメージしながら登った。3点確保ができていればそこまで難しくもない。

 ついに(というかやっと)幻の滝「早戸大滝」にたどり着いた。いい滝だ。落ち口からまっすぐに滝壺に流れ落ちているという一般的な滝の姿ではなかった。大雑把に記述するとこうだ。滝の高さを3等分したとき、上1つ分の高さまで水はまっすぐ落ちてくる。そこからは急角度の岩肌が始まり、水は岩肌を滑りおちる。下1つ分の高さには岩棚があり、そこに集約された水は勢いよく、水平方向にひと束の水流となって滝壺に吸い込まれていくのだ。この上ひとつ分の高さから下ひとつ分の高さまでの滝の様子が前面に立ちはだかる岩塔に隠されて見えなくなっているので、滝の全容は滝壺まで近寄ることでしか伺い知ることができない。滝自体へのアプローチが難しいこと、滝の姿自体が隠れていることが幻と言われる所以。なかなか面白いと思った。

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 しばらく、滝壺で感慨に浸ったあと、巻道をたどり、ザックを置いてきた箇所に向かう。攀じ登った滝をまた下降しようと考えもしたが、危ないのでやめた。

 ザックを回収したらいよいよ大滝沢を遡行する。渓相は凡庸なので遡行者は少ないだろうとこれまたネットの情報にあったが、記録自体はある。注目すべきなのは、ヤマレコのGPS軌跡が1本しかないこと。これなら、ハイキングを少しレベルアップして、あまり人の行かないところへ行ったのだと堂々と自分を説得できる気がした。もちろん人跡未踏の地を調査するなどという大きな野望とは程遠いが。

 まずは早戸大滝の落ち口へ向かった。落ち口からどのように水が落ちているかを、撮影したい。急遽、思い立って2m位の木の枝を拾い上げ、先端にiPhoneをテーピングテープで巻いた。落ち口を見下ろす斜面には木があり、トラロープが巻きつけてあったのでそれで体を支え、落ち口から水流が飛沫をあげている方向へ枝を伸ばす。10秒のタイマー設定なので、10数えてしばらくしてから枝を引き戻し、写真を確認した。うーん、飛沫が白くなって落ちていっている様子は確認できるけど、その先の岩棚に水が吸い込まれていくのを上から撮影した図になっていない。何度か繰り返した。また、枝だけでなくiphoneを先端にテーピングテープで巻きつけたストックと枝をこれまたテーピングテープで固定した進化版でトライしてみたりした。

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 結果的に目的の図は撮れず、いずれも初めに撮影した写真と大差はなかった。私はこの遊びを諦め、もう少し良い機材を調達してからのぞめば良いやと思い直して、行動を再開した。

 ネットの断片的な情報を咀嚼しきれず、ひたすら伏流水で水無沢のゴーロが続くものだと思っていたが、水流は豊富だった。ひたすら筋トレになるかと思っていたが、地味に楽しい沢歩きとなった。沢水は透明で、すくって飲んだらおいしいだろう。沢筋は広く、チビ滝が連続し、降り注ぐ日光に木々の新緑が煌めいている。気持ちがいい。f:id:yama_ak:20180523012546j:plain

 ときおり、支流の沢が合流する出合を通過する。本筋を行けば道に迷うことはない。だいぶ標高を上げると、沢筋はいくつかに分岐して段々と急になってくる。急な尾根に逃げることもできるが、当初の予定どおりこのまま沢を詰めていこう。最後の方はほとんど垂直の壁を登るようなところもあったが手がかりも多いので、浮石に注意すれば問題なく登れるだろう。途中、尾根に山桜が咲いており、わざわざ近寄って撮影した。

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 最後は、丹沢山頂直下の植生保護地帯に出た。ふじきが群生していた。なかなかいい雰囲気だった。植生保護の金網のない場所から、一般登山道に出て、丹沢山頂へ向かった。ヘルメットをした私を見て他の登山客が笑っていた。初めはイラッとしたが、そりゃそうだと思いなおした。一般的にこの山域は、ヘルメットをして登るような場所ではない。シトラスミントの匂いを漂わせた男女が仲良くハイキングしにくるような場所なのだ。沢を登るなら中途半端なことはせずにそれなりの場所へ、という教訓としよう。

 今日は昼飯を作ることとしている。この2,3年は軽量化に凝りすぎて、ライトミールで済ますことが多かった。栄養補給も水分補給も出来るし、速攻登山には持ってこいだ。ただ、食事も楽しみのひとつだと思い直して、棒ラーメンと卵、メンマ、乾燥野菜を買って昼飯とした。また、そのために小型のバーナーを調達していた。

 食事を済まして、みやま山荘の裏側、海側の斜面へ行くと予想通り電波が入った。ここで父親に現在地と下山予定を知らせ、駅に着いたらもう一度連絡する旨を伝えた。そしてレンタカー屋に電話し、到着時刻が遅れることを伝えた。Nレンタカーで浦安、葛西で延長料金を取られたことはかつてないのだが、本厚木はどうか?

 飯を食べ、本間ノ頭へ向かう。よく寝た体のコンディションとエネルギー補給が効いたのか、階段の歩きも苦にならなかった。まあ、獲得標高がそこまで多くはないので、一概に比較はできないが、今年3月に行った2度の丹沢では睡眠不足とライトミール頼みの軽量スタイルだったので、後半のエネルギー不足に悩んだ。今回はそんな悩みとは無縁なように思えた。軽量スピード重視の登山者がネットに書く情報を真似て、自分もそのように装備を整備してみるが、彼らは彼らなりの経験の蓄積による判断がそのスタイルを可能にしているのであって、今の私が志向に適合するスタイルであるとは限らない。彼らがネットで体験談を書くとき、その水面下に膨大な言外の知ともいうべき蓄積があることは無視してはならない。あくまで自分がどうしたいかを、自分の内に掘り下げていくべきだろう。

 本間ノ頭へ進むときから、右膝裏の外側の靱帯が痛み始めた。大滝沢の遡行を始めるときストックを使い始めたが、そのときから違和感を感じ始めていた。この痛みはストックを使い始めてからずっと感じてきた痛みだった。原因はおそらくストックの使い方にある。というよりもストックを使うことがダメなのだ。ストックを使うと足に体に支えが2本増えるため、人体が元から備えている足の自然な可動域を超えた範囲で足を動かすことが可能となってしまう。結果、無理な力が足に加わってしまうのだ。また、ストックを持つと俄然強気になって、スピードを上げ始めてしまうのも問題だ。どこかで、(そんなものがあれば、だが)ストックの正しい使い方を研究する必要があるだろう。でなければ、ストックは足が全く動かせ無くなった時の保険という位置付けにしたほうが良いかもしれない。

 本間ノ頭の一個手前のピークに到着したとき、そこから左に折れたルートを行くべく事前に2.5図を加工していた。だがこの現場でよく考えてみると、本間橋へ降りるには本間ノ頭から降りることが自然だし、初めはそのつもりだった。要するに地図の加工にも誤りがあったのだ。なかなか慣れないことはうまくいかないものである。予定通り本間ノ頭へ向かうことにし、歩を進めてしばらくしてにハッとした。あれだけ未踏や人のいないルートに行きたいと考えていたくせに、この期に及んでなぜ間違ったルートを行こうとしなかったのだろう。一般登山道に入ったことで、楽することを覚えてしまったのだろうか。本来の登山には"間違い"はなく、"より険しい"とか"平坦で迷いやすい"とか"より楽に行ける"という違いがあるだけで、適宜どのように対処していくかという営為があるだけなはずだ。ならば、ここで当初の予定ではなかったルートだとしても、さっさと突っ込んでいくという態度の方が、より純度の高い行為だったかもしれないのだ。多分ネットで情報を得ていたせいだろう。しかも、"本間ノ頭のルートは険しかった"云々という情報をさっと読んだだけで、頭にそちらのルート取りが強烈にインプットされてしまったのだ。こうなると事前にネットで情報の断片に触れるという行為がどれだけ臨む行為の本来性を損ねる行為かが分かる。しかも今回はさっと見ただけであって、この一個手前のピークからの道についての情報は調べていない。少しでもネット上に情報が書いてあれば、それを唯一無二な道だと瞬時に頭が反応する自分に一抹の不安を感じずに入られない。この反応を抑え情報は良く咀嚼して本来性とどれだけかなっているかを吟味するべきであろう。

 本間ノ頭で、しばしレスト。空が鈍色になり、風が冷たくなってきた。天気は予報通り下り坂だ。ここから旧丹沢自然教室までくだる。下る最中、だだっ広い尾根の赤テープを拾いながら歩く箇所があった。これが夜間だったら、困難を極めただろう。途中、左手に蛭ヶ岳が見えたり、大木が雷でも受けたのか生木のままなぎ倒されている姿も見た。

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下りは右膝が痛いので、設置してあったロープを掴み体の正面を山側に向けて、懸垂下降のような格好で下る場所もあった。1時間弱歩くと、植林帯に出る。赤テープをたどり、出発から1時間ちょっとで旧丹沢自然教室裏手に出た。これでやっと終わりだ。なかなかの充実感を感じることができる山行だった。

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 最後は、魚止橋手前に停めた車まで5分ほど歩く。車にたどり着いたら「どうせ遅れて延滞料とられるし」、と割り切って、荷物の整理・ゴミの整理・着替えをし、返却した時にザック一個を引っ張り出せばおしまいというふうにしておいた。いつも返却時に細々とした荷物が散らばっており、それを整理して車から降りるに地味に苦労していたのだ。ガソリンスタンドの場所がわからないので電波の通じるところまで降りて、iphoneで検索することにした。

 小雨がぱらつき始めた林道を、爆走する。反射神経が研ぎ澄まされたのか、かなりスピードを上げてもミラーの確認やカーブのこなし(何度も急ハンドルを検知されたが)がうまくこなせている気がする。

 林道を出たら、何かの敷地に向かう広い道路に車を止め、本厚木駅近くのガソリンスタンドを検索して、カーナビに入力した。あとは、車を走らせるだけ。宮ヶ瀬湖畔の新緑が爽やかな道路を走って都会へ戻ることとした。

 

----会計

交通費:

往路772

復路929

レンタカー8370(内延長594)

ガス771

計10842

食費:

朝飯616

棒ラーメン(1食)76

煮豚と煮卵213

ラーメンの具(1/3)68

計973

行動食:

水(2L)100

柿の種(わさび 1袋)36

柿の種(ラー油1袋)36

チョコ(bourbonミニビット9袋)155

チョコ(meijiベストスリー2袋)9

計336

その他:

ビール650

地形図印刷240

計650

宿泊費:

カプセルホテル2500

合計15541