こんな右腕が欲しい

寄生獣 岩明均

 地球環境を憂慮した何者かが、寄生生物を地上に送り込む。宿主は人間だ。寄生部位は脳。人間の意識を完全に乗っ取ることが目的だ。だが、ひょんな幸運から脳への到達へ失敗し、主人公のように右腕を寄生され、寄生生物と人間が奇妙な共同生活を送ることもある。右腕に寄生した「ミギー」と主人公「シンイチ」は、物語の早い段階で「寄生生物」-「宿主」という関係はそのままに、幾多の困難を共に乗り越えるいわば戦友と相成る。

 意識を完全に乗っ取った個体は頭部を変形させ、ときに他の人間の頭部を丸かじりにし、ときに鋭利な刃物として腕を、足を、首を、胴体を素早く切って捨てる。思考は合理的、性向は極めて冷酷。人間を食い殺すことを自らの存在意義とする寄生生物は目を背けたくなるような殺戮を幾度も繰り返す。また、徐々に社会性を身につけていく寄生生物は、人間をより効率的に支配し捕食する方法の模索を始める。だが個体により人間社会への溶け込み方は差があり、なかには「ミギー」と「シンイチ」の関係を”面白い”と称し、人間の子供を産み人間の心情を理解する個体も現れる。

 右腕に寄生した「ミギー」は高い知性と論理性で、「シンイチ」に協力。寄生生物の襲来を何度も退けるが、「シンイチ」が抱く人間的な感情を非論理的なものとして理解を示さず、たびたび意見が対立する。だが最強の寄生生物との激戦を制したあと、「シンイチ」に友達として礼を述べ、物理的な世界から自らの内面世界へと旅立っていく。